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体験談(約 39 分で読了)

【高評価】娘である悠花との記録【増補改定版】(2/6ページ目)

投稿:2023-09-28 13:46:38

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本文(2/6ページ目)

ちなみに昼間は誕生日プレゼントを探していた。

誰かに誕生日プレゼントを渡したことなど、それこそ琴美が最初で最後だったかもしれない。

「ゴハン?」

「うん。フレンチの予約とってあるよ。」

「お酒は…?」

「ソムリエさんがいるお店だから、少し飲むよ笑」

悠花は安心したように笑った。

「ドレスコードのあるお店って、初めてかも…」

「緊張してる?」

「ちょっと笑」

あの寿司屋も一応ドレスコードあったのだが。

「誕生日おめでとう。これ、気にいるか分からないけど…。」

これくらいの年頃の子が何をもらうと嬉しいのか、分からなければ聞ける相手もいないので、本当に困った。

「ええ!?何もいらないからって言ったのに…!!」

「娘の誕生日なのにそうもいかないよ。」

ボーイは俺と悠花が親子関係であることを見抜けていなかっらしく、静かに目だけで驚いていた。

「バッグだ…!!あれ…?靴もある!!」

バッグと靴と腕時計の三点セットにした。

というのも、一つ外してもあとの二つのどれかが当たれば良いかと思ったからだ。

どれも高いブランドのものではなかったが、まだ中学生だし良いかと考えた。

「ご、豪華過ぎるよ、お父さん…」

「えっ、いや、今年だけだよ…」

「国税局勤務なのに、そんな無駄遣いしていいの…?」

「仕事は関係ないよ…俺はちゃんと納めてるし…あと、無駄遣いじゃない。これまでまともに使う機会もなかったから今日くらい、良いだろ。」

「塾にも行かせてもらってるし、お小遣いまでもらってるし、それ以上は」

推測でしかないが、この子は、琴美と暮らしていた頃、かなり切り詰めた生活をしていたのだと思う。

「いいんだ。これでも一応、お父さんなんだ。周りの子はみんな塾も行くし、お小遣いも貰ってると思うから。」

悠花は目をしばたたかせていた。

琴美はこの子に、どんな良い教育をしてきたのだろう。

悠花は俺の知らないところですくすくと健気に育っていた。

「外側から取るんだけど…まあいいや、俺の真似して取っていって」

前菜がやってきたのだが、フォークナイフの取り方が分からなかったらしく、悠花は困惑していた。

フレンチの味は、まあ普通だった。

悠花はいつも通りもりもり食べていた。

成長期というのは、どんなに細い女の子でももりもり食べるものなのかと感心しながら見ていた。

「ワイン美味しい?」

「美味しいよ。…何となくしか分からないけどな笑」

「何それ〜笑」

正直ワインは分からなかった。

ただ誕生日だというから、雰囲気はワインが合うかなと思ってフレンチにしてみただけなのだ。

「高校一年の夏にな、お母さんと知り合ったんだよ。」

気分も良かったので、酒の話になったのに乗じて琴美の話をすることにした。

悠花は急に真面目な顔をした。

「お母さんは私立の女子校で、お父さんは男子校だった。お母さんは、うちの文化祭に友達と来てたんだ。お父さんは一目惚れして、その場で連絡先を交換したんだ。それから割とすぐ付き合いだしたよ。お互い初めての恋人だったんだ。」

思えば、今の悠花もあの頃の琴美もそう大して歳は変わらないのだ。

「お母さんは、その時からお父さんは背が高くて、お母さんの友達からもモテてたって。」

「それはどうかな、分からないけど、お父さんはお母さんのことしか見えてなかったよ。綺麗だった。悠花に似て色白で、すらっとしてて、笑顔がたまらなく可愛かった。お母さんは、それから、優しくて、」

悠花は時折目を細めて、何かを思い出すような眼差しで俺の話を聞いた。

その優しい表情は、俺の話を聞く時の琴美にあまりにそっくりで泣きそうになった。

・・・・

・・・

・・

一緒に暮らすようになってから3度目の悠花の誕生日。

あれから悠花は市内の公立高校に合格し、バドミントンと勉強に熱心な女子高生になっていた。

悠花の誕生日は仕事を休むのが慣例になっていた。

幸い、悠花の誕生日は比較的仕事を休みやすい時期だった。

「誕生日おめでとう。悠花ももう17歳か。」

17歳、それは俺が悠花の父親になった歳だ。

「ありがとう、お父さん笑」

悠花の希望で、この年の誕生日は俺の手料理で祝うことになっていた。

正直、俺はあまり料理が得意ではないと思うのだが、それでも悠花は美味しいと言って食べてくれた。

そして決まって俺が少しお酒を飲み、琴美の話をした。

ここまでは、最初の誕生日祝いから同じ。

しかしここからは、それまでの誕生祝いとは違っていた。

「お母さんは、17歳で私を産んだんだよね…?」

「そうなるな。」

「いいな」

「えっ。」

「いいな、って。」

「良いことないだろ。お母さんは、琴美は、お父さんにそれまでの真っ当な人生を壊されたんだ。良いわけないよ」

俺は、お酒が入っていたこともあってか、悠花の、望まれない妊娠に憧れるかのような言い方に過敏に反応して、少し語気を強くしてしまった。

悠花も、それに応えるように語気を強めた。

「お母さんは…!お母さんは、後悔なんてしてないって…!もう1回人生をやり直せたとしても…私は悠花を産むって、言ってくれたもん…!!」

知ることのなかった琴美の言葉に、俺は閉口した。

もっと早くその言葉を聞いていれば、俺はどんなに救われたか。

「私も、お母さんみたいに好きな人の子どもが欲しいな…」

俺はその発言を咎めることもせず、言い知れない不思議な気持ちに浸っていた。

「相手は…いないのか…?」

日頃から、年頃の娘を気遣うつもりでそういった敏感な話題は振らないようにしていたのだが、なぜだかこの日は聞いてみようという気が起こった。

「・・・・・・いるよ。」

「…!!」

間を置いて、悠花は衝撃の回答をしてみせた。

俺は静かに、しかし激しく動揺した。

「そ、そうなのか・・・」

「・・・」

「・・・」

俺も悠花も押し黙った。

グラスに残った森伊蔵の水割を一気に流し込んだ。

グラスをテーブルに置くか置かないかで、悠花は口を開いた。

「お父さん・・・私、お父さんのことが好きなの」

は…えっ?うん??

頭が真っ白になって、ぐっと詰まったが、一旦落ち着いて、ゆっくり、まずはグラスに水割を作り直して、そうして、すぐにああそういうことかと納得した。

「一瞬びっくりしたよ・・・まあでも、クラスの子とか、部活の先輩とか、そういうので好きな人がいても別にいいんじゃないか?」

入れ直したばかりの水割をグッと飲み、俺は、大人ぶって余裕のある返事をした。

「・・・」

「・・・」

ズレたことを言った時特有の、微妙な空気の流れを感じた。

「えっ?」

そしてそれと同時に、俺は点と点が線で繋がる感じも覚えた。

「いや、悪い・・・」

悠花はその間も押し黙っていた。

願わくば、俺の勘が外れろと、勘違いであれと思った。

しかし悠花は俺の勘が正しいことを裏付けた。

「お父さんが、好きなの。」

たっぷり時間を溜めて、しっかりと言った。

琴美と同じ瞳に射すくめられ、身体の表面がグラグラ熱くなった。

あの真剣な瞳が、いかにも真面目な表情が甦る。

俺は視界がチカチカして、動悸もして、すっかり動転していた。

目の前に、琴美の像が見える…。

「琴美・・・すまない、俺、ちょっと体調が悪いらしい・・・」

半ばふらつきながら俺は席を立った。

いつの間にかだいぶ酔いが回ったらしかった。

「ちょ、お父さん!?大丈夫!?」

琴美は慌ててよれよれの俺の身体を肩で支えた。小さな肩だ。

「すまん琴美・・・ちょっと飲みすぎた・・・」

「琴美じゃなくて悠花!!ちょ・・・しっかりして!!」

悠花は俺を自室のベッドまで運んでくれたようだった。

というのも、いつの間にか俺はベッドで眠っていて、明け方に目が覚めたのだ。

直ぐそばでは悠花が静かに寝息を立てていた。

「一緒に寝たのか!?」

と騒ぎ立てそうにもなったが、その悠花は眠り姫のようで、神秘的なものさえ感じ、声を失ってしまった。

「んっ・・・あ・・・お父さん・・・オハヨー」

目をこすり、悠花はやさしい笑顔で挨拶をした。

それはいつもの悠花の朝の挨拶だった。

「俺はまた夢でも見たか?」

あまりにも普通な悠花を見て、脳裏に残る霞んだ記憶が、ひょっとしたら夢だったのではないかと思えてきた。

そう思うと気が楽になり、俺はいつも通り出勤の準備を始めた。

悠花も何気ない感じで顔を洗い、朝食の支度をしたり、髪を梳かしたりしだした。

・・・

しかしその日から、何となく俺たちの生活は歪み始めていた。

悠花との距離が、露骨に近くなりだした。

「おかえりなさい。」

「うん・・・ただいま?」

その日の夜から、うちに帰ると悠花が俺のことを玄関先で出迎えるようになった。

それどころか、夕飯を作るようになっていた。

それまではスーパーで買ったお惣菜に、簡単なもの(味噌汁や、おひたしや、サラダなど)を作ってくれていたくらいなのに、メインとなる料理まで手作りになった。

「トンカツね、作ってみたの。今から揚げるね。」

悠花は何の動機も話さず、少し緊張した面持ちで台所に戻っていった。

「あ、お風呂も沸いてるよー!!」

着替えていると、台所にいるらしい悠花の声が聞こえた。

「お、オウ!!」

なんだこれは?

これじゃまるで新婚じゃないか。いやいや、考えすぎか。

かぶりを振って、気にしないことにした。

「美味しいよ。」

「本当!?良かった・・・。」

9時過ぎ、俺が少し遅い夕食を黙々と食べるところを、悠花も向かいの椅子に腰掛けて黙々と、少し微笑みながら見つめてくる。

気まずい。

「お仕事は、忙しい?」

口を開いたかと思うと、今まで殆ど聞いたことがないような話だった。

「えっ、ど、どうだろう・・・この時期にしてはいつもより忙しいかな・・・どうして?」

「どうしてって・・・変かな?」

変だろとも言えず。

「片付けるね。」

俺が食べ終わったと見えて、満面の笑みでそう言った。

返事をすると、食器をまとめて洗い場まで持っていって洗い物をしてくれた。

熱いお茶だけが、俺の前にある。

ぼんやりしてるうちに洗い物を終え、悠花は自室に戻り、勉強を始めたようだった。

とりあえずもう沸いているらしい風呂に入った。

風呂をあがる頃には俺も平静を取り戻して、いつも通りの活動をするようになっていた。

パジャマに着替え、アイスを食べ、歯を磨き、ニュースを見て、日付が変わるか変わらないかのくらいで寝室に行き、ランプの明かりで本を読む。

「なんだそのトリックは・・・」

推理小説にハマっている時期だった。

あまりに現実を逸脱したトリックにドン引いていると、コンコンと戸を叩く音がして飛び上がりそうになるほど驚いた。

そんなこと、今まで一度もなかったのだ。

「はっ、はーい!」

返事をする声が少し上ずった。

「お父さん・・・?」

悠花もいつの間にか風呂に入っていたようで、既に桜色のパジャマに着替えていた。

「どうした。」

「一緒に寝てもいい・・・?」

「えっ、どうして・・・?」

「寂しいから・・・」

返事に窮した。

この子には、身寄りがない。

母もいなければ、祖父母だって一人もいない。

寂しく思う夜が無いわけない。

しかし昨日今日の事があるから、簡単に返事をすることもできない。

言葉を探している間に、悠花は俺の布団の中に潜り込んできた。

俺は悠花に背を向けるようにして、悠花は俺の背中に身を預けるようにして眠った。

お迎え・お風呂・夕飯と並び、これはこの日を境に習慣となり、翌日も、その次の日も続いた。

・・・

「おかえりなさい。」

「うん、ただいま。」

「ご飯、出来てるよ。・・・お風呂も。」

「ありがとう。・・・夕飯準備するの、大変だろ?ありがたいけど、無理しなくていいぞ。」

「いいの。好きでやってるだけだから。それよりも、あったかいうちに食べて。」

この頃はよく幸せそうに笑うようになった。

そして今日もまた、悠花は俺の寝床に入り込んできた。

「なあ悠花、そろそろ一人でも寝れるんじゃないか?」

背中越しに語りかけてみた。

悠花は無言でいた。

「無理にとは言わないけどさ。」

悠花はなおも黙ったまま、より一層身体を寄せてきた。

風呂上がりの熱を帯びた悠花の身体は、その輪郭がはっきりと感じられて、身体つきがありありと分かる。

変な気を起こすつもりはないが、悠花は小さな子どもでもないので困る。

見た目には細い身体でも、こう距離が縮むと分かる、女性特有の柔らかさがあるのだ。

悠花は、琴美と同じ匂いがする。

近頃は姿形だけでなく、言動なども似てきたような気がする。

毎晩そんなことを考えては、高校生の娘と父親が同じベッドで寝ることの異常さを思い出す。

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話の感想(3件)

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  • 3: 名無しさん [通報] [コメント禁止] [削除]
    テーマは重いけど、間違えなく名作ですわ
    長すぎず、短すぎず
    ただ、悠花ちゃんへの愛撫が少ないのがちょっと残念

    0

    2025-02-04 00:28:02

  • 2: 佐々木さん 作者 [通報] [削除]

    鳳翼天翔さん
    いやあ、とても面白かったです!文章もうまいし、テンポもいいし!出てくる悠斗さんや悠花ちゃん意外のキャラのクセの強さといい。女教師をポンコツ呼ばわり!(笑)出来れば子育て編や何かの続きをお願いいたします…


    ありがとうございます笑

    最近は悠花も忙しそうですので、またエピソードが溜まったら、まとめて投下します。

    0

    2023-09-30 18:33:14

  • 1: 鳳翼天翔さん#Q1ZjQjA [通報] [コメント禁止] [削除]
    いやあ、とても面白かったです!

    文章もうまいし、テンポもいいし!

    出てくる悠斗さんや悠花ちゃん意外のキャラのクセの強さといい。

    女教師をポンコツ呼ばわり!(笑)

    出来れば子育て編や何かの続きをお願いいたします!

    1

    2023-09-28 21:00:28

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