官能小説・エロ小説(約 35 分で読了)
亜紀のスピンオフ“ドМ女子登場!”より なんと、亜紀に瓜二つの女性がいた。(1/3ページ目)
投稿:2021-08-24 23:46:50
更新:2021-09-05 21:05:32
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本文(1/3ページ目)
私が亜紀と出逢った頃、亜紀は28歳だった。この話は亜紀が20歳の頃の話となる。
彼女がレストランでアルバイトをしていた頃のことになる。土日のかなり忙しいレストランで働いていた時のことだった。
明石原「亜紀ちゃん、3番さんにチーズインハンバーグ、持ってって!」
亜紀「はーい!」
倉科亜紀(くらしな・あき)は、お店の赤い制服を着ていて丸っこい白のエプロンをして黒タイツのミニスカート姿だった。他ウエイトレス2名と40代前半くらいの店長の明石原信之(あかしはら・のぶゆき)が忙しく動いているなか、何もせずぼーっと突っ立っているウエイターの23歳になるフリーターの男、五十嵐悟(いがらし・さとる)がいた。
亜紀「五十嵐さん、ちょっとごめんなさいね。」
亜紀がテーブルに持って行くスプーンの置いてある場所の前を悟がふさいていたので、亜紀が場所を空けるよう要求したのだ。
明石原「おい、五十嵐!この忙しい時に何ぼさっとしとんねん。そんなとこに突っ立っとったら亜紀ちゃんが作業しづらいのがわからんのか?ボン持ってテーブルでも片付けに行かんかい!」※ボン=トレイ
悟「はい、すいません。」
悟は、トレイを一枚手にしてホールへ向かおうとした。
明石原「何が、“はい、すいません。”や。俺はいっつも言うてるやろ。忙しい時だけは常にホールを見とけって。それにトレイだけ持って行っても何の意味もないやないか。ダスターも持って行かんかい。まったく。なーんも俺の言うことを聞いとらんのやからなあ。」
悟「ごちゃごちゃとうるさいのう。」
悟は、明石原に聞こえないように小声で言ったが・・・
明石原「おい、五十嵐。何か言うたか?意見があるなら聞こえるように言えや。いらっしゃいませ!」
明石原の後に続いて亜紀たちウエイトレスも「いらっしゃいませ!」と声を出すが・・・
悟「・・・・・」
明石原「五十嵐!お前も言わんかい!」
悟はお客さんが入店しても無言だったため、明石原が喝を入れた。
悟「いらっしゃいませ」
明石原「今頃言うても遅い!お客さんが来た時の挨拶は入ってからすぐにせい!それから今のは声が小さいねん。もっとでかい声をだせ!」
悟が明石原から叱られている中、亜紀たち3人は忙しく動いていた。その時厨房の30代後半くらいの調理人チーフ水島陽介(みずしま・ようすけ)がホールの者たちに話しかけた。
水島「おい、この伝票は誰が書いたんや?」
明石原「チーフ、とうしたん?」
水島「どうしたもこうしたもあるかいな!うちのレストランは茶碗がないから茶碗でのライス盛りは出来へんのに、“ライスは茶碗で”なんて書いてる奴がおるんや。」
明石原「あー、五十嵐。お前さっきライスの茶碗が出来るかどうかをお客さんから聞かれとったよなあ?どう答えたんや?」
悟「それなら・・・」
亜紀「それなら、私です。私が五十嵐さんに出来ると教えてしまいました。」
本当はそうではなかった。悟がお客さんに聞かれている横で亜紀は別のお客さんに別のことを聞かれていて、「はい、出来ます。」と回答したのだが、悟はこれを自分に教えてくれた回答だと勘違いしていたのだ。
とっさに亜紀が悟をかばったのだ。
悟「それは違います。僕が他のお客さんに倉科さんが回答したことを勝手に勘違いしました。」
明石原「五十嵐、お前早とちりもええとこやなあ。お前がお客さんから聞かれてるのに亜紀ちゃんがそれを回答するわけないやろ。冷静に考えたらわかるようなもんを・・・お前が他のウエイトレスよりも年上やねんから、もっとしっかりしてもらわなアカンねんで。」
繁忙期が過ぎて、店にお客さんが少なくなってきたときのことだった。厨房から水島が出てきて、亜紀に話しかけた。
水島「亜紀ちゃん、なんもあんな奴かばうことあれへんねんで。君までもあいつの悪い病気が伝線してしまうからね。君は、このレストランでは人気者でアイドル的存在やねんから、あいつとは距離を置いたほうがええで。」
明石原「そうやなあ、このお店が繁盛してるのも亜紀ちゃん、君のおかげやで。お客さんから店の若い奴らまでファンクラブが発足してるくらいやもんな。五十嵐がもし君に変なことでもしてきたら俺に言うてや。」
亜紀「変なことって、どういうことですか?」
明石原「それは、君のお尻や太ももでも触ってきたら、痴漢で警察に突き出してクビにでもしたるわ。ぼさーっとして何をしてるんかと目線を追ってみたらいつも3人のウエイトレスの下半身のほうに目をやっとるからなあ。こいつには刑務作業が似合うてるわ。」
悟は、水島と明石原の心無い言葉を横で聞いていて、体をふるわしていた。
悟「あーそうですか。」
悟は、小声で言った。
明石原「何や。さっきも言うたけど、話しするときはでかい声で言うてくれよ。蚊の鳴くような声ではわからんで。」
悟は、何かを決心したような顔をした。亜紀もその場面を見ていて、何かが起こりそうな予感がしていた。
悟「じゃあでかい声で話しますよ。こんな店辞めてやる!」
明石原「何、辞めるやと!ちょうどええわ。こっちも以前からお前を辞めさせたかったんや。何か悪いことをしたらこっちから遠慮のお辞めさせられるとこやったけど、お前の方から言うてくれたら、楽でええわ。」
水島「亜紀ちゃん聞いたか?五十嵐が辞めるってよ。」
亜紀「五十嵐さん、ここで短気を起こさんと。お仕事わからんことは私が何もかも教えますから・・・ね。」
悟「倉科さん、それではアカンわ。君の気持ちはありがたいけど、水島チーフが言うたように、悪い病気が伝線するから、僕は・・・いや・・・俺はここにはおらん方がええわ。」
水島「おー、さっさと出て行けや。茶碗がないことくらい、最初に説明してるよな。お前ここに入ってどれくらいたつねん?1カ月にもなるんと違うんかい!そんなこと俺なんか・・・いやお前以外世界中のみんな一日で覚えられるわ。ホール作業もろくに出来へんし俺ら料理人の作ったオーダーは床に落としたりで台無しにして何べん作り直しをしたことか・・・」
亜紀「水島さん、そこまで言わんといてあげてください。私らよりもあとに入ってきた人がお仕事でミスするのは私らホール係の先輩にも責任がありますから。」
明石原「亜紀ちゃん、俺ら何べんも五十嵐には泣かされてるんや。ひとつも言うこと聞けへんからのう。わからんことは黙ったままで質問すらせえへんし・・・。こいつは今にも俺らをそのナイフフォークで刺そうとしとるで。ほら見てみいや、五十嵐の目ぇを。殺意に満ち溢れてるわ。あー怖ぁ。」
悟は、ナイフフォークに手を伸ばしてナイフを取ろうとしたが、手を放して取るのをやめた。そして、壁にもたれた。
悟「それだけ言われたら返す言葉がないですね。俺の綻びをたくさん出してくれてすっきりしましたよ。」
明石原「綻びはそんなもんとちゃうやろ、タイムカードを押し忘れとるわ。休憩は、時間になっても戻ってこんとオーバーしとるし、まだまだなんぼでもあるやんけ。」
悟「俺は喧嘩が出来る男やない。口喧嘩も殴り合いの喧嘩も全く歯が立てへんわ。あんたらにこれだけ綻びを出されたら、謝らなアカンのは俺で、あんたらに謝らせることなんて到底出来るもんやないわ。非があるのは俺の方でしかないねん。」
亜紀「五十嵐さん、喧嘩なんて出来んでもええから、これ以上の争いは止めときましょう。」
水島「亜紀ちゃんはええから。五十嵐君よ、そんなこと当たり前やないか。俺らになんの非があるちゅうんや。」
明石原「辞めるんやろ?はよ着替えて荷物一つ残らず持って帰ってくれや。」
悟は、ロッカーへ向かっていこうとしたが、一つ疑問があると明石原と水島に見えるように人差し指を上に向けた。
悟「俺は今回辞めることにしたけど、実は逆やったらどうやろなとも思うねん。」
明石原「逆やで?」
悟「例えば、プロ野球なら審判の判定の不服で抗議をする選手や監督がおるわなあ。プレーする側が暴言を吐いたら、暴力を振るったら、チーフいや水島さん、どうなりますか?」
水島「なんや、その呼び方は?まあええわ。プレーする側は退場になるんやろ?それがどうした?」
亜紀「私。野球のことはようわかりませんけど、どういうことなんですか?」
と亜紀は、明石原に聞いた。
明石原「まあ、それは五十嵐がうんちくを垂れとんのを聞いとこ。俺も何が何なんかようわからんわ。」
悟「俺は、あんたらを野球の審判みたいに退場させたいねん、辞めさせたいねん。でもあんたらが辞めてしもたらどうなるか?このレストランがまわりませんよね。俺が代わりに店長・チーフの役割をせなアカンことになるわなあ。店長、うんちく垂れてるんやないで。」
明石原「聞こえとったんかい?そうなった場合、お前に店長・チーフの役割などさせへんわ。他から応援呼ぶわ。」
悟「あっそうですか。それなら楽でええねん。退場させた審判は、自分が選手らの役割が出来へん。そのへんの責任は負ってない。・・・。」
明石原「お前何が言いたいねん。俺と水島を首にでもするつもりなんかい?自分は楽して仕事をするんかい?」
悟「できればそないしたいわ。けど、辞めさせればどうなるか?プレーする野球チームと審判団は別々の職場で、俺らの場合は違う。同じ職場やから周りはみんな俺に何もかも責任を押し付けるようになるのは当然。わざわざ俺があんたらを辞めさせるなど危ない橋は渡らへんわ。」
明石原「じゃあ、プロ野球チームや審判団がどうやの何の関係もあれへんがな。」
水島「クイズまで出して、無駄な時間を取らせるなや。店がすいてても厨房はやることが山積みなんやで。」
悟「俺は、退場させる権限を持つ審判が羨ましいというてるんや!喧嘩が出来へん男の西郷隆盛の・・・・・あー、間違えた間違えた、ごめんよ、最後の悪あがきしたるわ。あんたらに反抗するのは怖いけど、これだけは言うといたる。」
悟は、わざと「最後」というべきところを「西郷隆盛」などと間違えて言った。声は客席にまで聞こえるくらいの大声だ。数少ない客が注目していた。これが悟の激高しているパターンとも言える。
亜紀「さ、西郷隆盛・・・」
別のシーンでダジャレを言っているのなら笑うことも出来るが、この殺伐とした雰囲気では、亜紀の心境は複雑なものだった。
水島「なんやそれ、西郷隆盛って?しょーもなー。無駄な時間ばっかり取らせる奴やのう。」
明石原「最後の悪あがきって何やねん?」
悟「弁護士呼んだるわ。言い訳一つ出来へんから。あんたらの方の綻びを出して、すまんかったと謝らせてやるからね。覚悟しとけや。」
水島「弁護士やて?」
明石原「変わったことを言う奴やなあ。民事でも刑事でもないことで。そんなこと今お前がやりそうになった殺人事件でも起こしてから言えよ。」
水島「事件を起こす前に言うといたろっている腹でしょう。冥途の土産とでも言いたかったんじゃないのかな?」
悟「ええ年した大人がいつまでも馬鹿にしとったらアカンで。弁護士を呼ぶとそっちにとってかなり不利になるからなあ。金をかけてるのは俺や。弁護士は俺の味方だけをするで。徹底的にお前らつるし上げられるからなあ。仕事のやり方まで変えられることになるぞ。」
悟は少し間をおいて、またしゃべり続けた。
「直訴は天下の御法度と言うけど、その直訴を俺はするんやからな。下手したらあんたらが辞めなアカンことになるかもな。俺は、仕事を辞められたら、あとは極楽やけど、はたして君たちはとうかな?き・み・た・ち・は!妻子がおるんやろ?正社員やし、あとが苦しくなるんとちがうかな?」
悟は、年上の上司に「君」をつけて呼んだ。精一杯の嫌味なのだろう。
水島「直訴は天下の御法度なんやろ?それやったらき・み・も・大罪で罰せられるんと違うんかいな。直訴は止めといた方が、き・み・の・ためでもあるから忠告しといたるわ。」
明石原「そうやそうや。き・み・が・損をするだけや。」
明石原も水島も、悟が言った言葉の揚げ足を取るように言い返した。
悟「あのね、さっきも言いましたけど、私のほうがお金をかけてるんですよ。僕らはお客さんから給料をもらってると店長・・・いや・・・明石原様はよく言っておられたじゃないですが。お金を弁護士に払う私は弁護士にとって何ですが?お客さんじゃないんですかー?それで捕まるのではたまったもんとちゃうわ。」
明石原「ほう、店長という言い方を止めて明石原様か。精一杯の嫌味やなあ。だったら、直訴は天下の御法度などと言うなや。」
悟「やかましいわ。お前はなんもわかってないんじゃ。今までのことを謝るなら今のうちやで。弁護士呼ぶのやめたるけど・・・お店辞めるのもやめたるけど、さあ、どうする?」
明石「勝手にせいや。弁護士を呼べるもんなら呼んでみいや。」
水島「弁護士を呼べるだけのお金はあるんかな?まだ1か月だけしか働いてなくて、その前は長いこと無職やったと聞いてるけど、大丈夫?」
悟「き・み・た・ち・に・心配されるようなことと違うんや。なんや俺が弁護士費用のために借金でもしたらおもろいんかいな?まあ俺が借金だらけになってもき・み・た・ち・に・借金を肩代わりしてもらおうなんてこれぽっちも思ってないから。そいつを恐れてるんなら安心しな。」
悟は、「これっぽっち」と親指と人差し指でをカタカナの「コ」の形をつくって明石原と水島に向けて厭味ったらしく言った。厨房の料理人2~3人とウエイトレス2人が、店長とチーフについて会話をしていた。全員が、五十嵐が可哀想だと言っている。
亜紀「五十嵐さん、もうやめよう。後半の営業も始まるし、私がお仕事が終わったら何でも聞くから・・・」
しばらく、悟と明石原たちの言い争いが続いた。その間に亜紀は休憩室へと入った。休憩室は、ドアを開けると事務所があり、すぐ横には畳六畳くらいのくつろくスペースがあり、その向こうには男女別ロッカーがある。亜紀は自分のロッカーから何かを取り出して女子ロッカーから出てきた後でじっと男子ロッカーを見ていた。そして、事務室の机に座った。亜紀は何をするつもりなのか?
しはらくして亜紀が休憩室から出てきた。
悟はロッカー室に行き、服を着替えて荷物をまとめ、店をあとにした。荷物をまとめていると、何か見覚えのない手紙のようなものがあった。悟は手にしたが、中身を見ずにカバンに入れた。言いたいことは全部明石原たちに言った。しかし、水島に言われた弁護士費用が引っかかるだけた。借金をしたごとがない悟は、借金をする勇気などない。お金をどうするべきか悩んていた。
悟が、店を出て行こうとした時だった。
明石原「おい五十嵐、給料どうするんや?銀行振り込み出来へんで。」
悟「♪瀬戸ワンタン日暮れ天丼夕波こ〜な〜味噌ラーメン♪」
水島「なんやそれ?わけがわからんのじゃ!」
明石原「・・・・・」
悟「1972年の流行歌“瀬戸の花嫁”の言葉遊びじゃ。そんなこともわからんのか?」
水島「それはわかるがな。何でそこでそのような歌が出て来るのかがわからんって言うてるんじゃ。」
悟は、休憩室の前からレストランの従業員専用出口まで進んだ。
悟「セクハラ、パワハラ、明石原!」
明石原「何やと!?」
水島「うわー、言いよったなあ」。
悟「あっそーれ、セクハラ、パワハラ、焼け野原、おっと間違えた。明石原!」
明石原「おい、お前、ええ加減にせえよ!」
悟は。明石原をけなす文句を、名前をわざと間違えて二度続けて言い放った。
水島「これはあいつの方からのイジメやで。弁護士呼んでもあいつに断然不利やな。」
悟は、ドアを開けて一目散に逃げて行った。いつもの帰り道を通った。
明石原「あの野郎、灰皿でも投げつけてやりたかったわ。焼け野原って何やねん。西郷隆盛とか、気ぃ狂うてるで、あいつは。」
水島「やめときましょう、店長。灰皿が汚れるだけで、お客さんに出せんようになってしまいますよ。」
明石原「あっそうや、思い出した。」
水島「何を・・・ですか?」
明石原「五十嵐の野郎、面接のときにやたら楽しそうに話しとったことがあってなあ、それが白血病で亡くなった義理の姉の思い出で、その姉がいつも歌うて(うとうて)くれてた歌が♪瀬戸ワンタン~やったって言うとったわ。」
水島「あっそう?それは知らんかったですねえ。」
明石原「普通面接でそんなこと話せへんもんやねんけど、俺が聞いたことに対しては、答えがあいまいやのに、わざわざ亜紀ちゃんを指さして“あの女の子、僕の亡くなった義理の姉によく似てる”なんてぬかしよるねん。」
水島「亜紀ちゃんを指さしよったんですか?普通の神経しとらん奴ですね。」
明石原「まったくや。“あの時は天国の姉のために1人でも頑張ってるところを見せたいんです。”なんて言うとったのに、あんなやる気のない態度では、姉貴は天国で泣いとるに決まってるわ。」
亜紀は、ウエイトレスの1人中条しおり(なかじょう・しおり)と休憩中に話していた。しおりは亜紀より1つ年上になる先輩だ。
亜紀「あぁ、もう私、五十嵐さんには何も聞いてあげることができへんのでしょうか。ここに戻ってくることなんて二度とないですよねえ。」
しおり「亜紀ちゃん、私ね、この間五十嵐さんをいつも降りる駅で見かけたことがあるねん。」
亜紀「えっ、ほんまに!?しおりさん、確かいつも降りる駅って確か・・・」
しおり「そう、S駅。五十嵐さんは西口方面に向かってたで。あとのことは美幸ちゃんに聞いてみたらわかるわ。」
休憩が終わったしおりは、休憩室を出て行った。美幸とは、もう一人のウエイトレスで春日井美幸(かすがい・みゆき)という。彼女もしおりと同じ駅で降りている。しおりは、美幸から悟とは家に向かう方向が同じだったと聞いていた。しばらくすると、美幸が休憩室に入ってきた。美幸は、亜紀と同い年になる大学生のバイトだ。
美幸「亜紀、しおりさんから聞いたで。五十嵐さんのことを心配してるんか?」
亜紀「美幸ちゃん、五十嵐さんのこと詳しく教えて。お願い。」
美幸「府営住宅に入っていくところは見たよ。でもどの棟かはわからんで。5棟あるところの一角やねんけど、偶然にも会えたらいいよねえ。亜紀、そんなに五十嵐さんのことが好きなんか?」
亜紀「ほっとかれへん人なんですよ。なんか年上やねんけど、母性本能をくすぐられるというか、そんな感じ。」
美幸「まあ亜紀は、そういうところが男性にモテるんやと思うわ。今日入ってない男性陣も亜紀のことを気に入ってる人はおるからね。」
そのとき休憩室に誰かが入ってきた。厨房の男子だった。名前は、麻木賢太(あさぎ・けんた)といって、五十嵐と同い年になる者だ。
賢太「厨房でも言うたけど、チーフも店長もあーいう言い方はよくないと僕は思うなあ。あれじゃあ、五十嵐がふてくされるのも無理ないで。」
亜紀「麻木さん。私、どうしても今日のこと自分が悪いような気がしてしょうがないんです。」
賢太「そやなあ、亜紀ちゃん。君、女性やから五十嵐のところまで行こうとなんかせんほうがええわ。それは何も僕の嫉妬ではないで。僕は五十嵐のことはようわからんけど、もしあいつが女嫌いで君が合えたとして、そのあとで追い返されたりでもしたら、何もかもが無駄足になるからなあ。ここは僕に任せてよ。」
賢太は、亜紀が好きだという気持ちを必死に抑えるように話した。亜紀が悟のことが好きなのなら、自分は身を引いて力になってやりたいと思っていた。
美幸「えー、どうするんですか?」
亜紀「実は私、携帯の番号を書いたメモを五十嵐さんのロッカーに・・・男子ロッカーに入るの恥ずかしかったけど、入れといたんです。なんでも聞きますよと一言書いて。でも、それを見て相手にしてくれるかどうかわからんし。」
賢太「五十嵐のロッカーに?ちょっと見てみるわ。」
賢太は、悟のロッカーを開けてみた。しかし、ロッカーは空っぽで亜紀の言っていたメモは見つからなかった。
賢太「ロッカーの中にはメモはないで。亜紀ちゃん、他のロッカーに間違えて入れたなんてことない?」
亜紀「間違いなく入れました。五十嵐さんが店長らと言い争ってる間にロッカーの名札をしっかり確認してから入れといたから。」
賢太「じゃあ間違いなく五十嵐はメモを手にしてるなあ。読んでるかどうかはわからんけど・・・。俺に任せてなんて言うたけど、もしメモを読んでたら、やる必要ないかな?」
美幸「賢太さん、何をしようと考えてたんですか?」
美幸が、興味深そうに尋ねた。
賢太「限られた範囲やろ、美幸ちゃんの話しがここに入る前に聞こえとってんけど、5棟あるうちのどこかやったら一件一件あたってみて、五十嵐の自宅をつきとめようかと思ってたんや。」
亜紀「五十嵐さんから電話がかかって来ると嬉しいけど、あの人だけは私には興味なさそうやと思うねん。男性のみなさん私のことを亜紀と呼ぶのに、五十嵐さんは倉科と呼んでたし。」
賢太「なんか噂やねんけど、あいつは君ら3人の下半身をジッと見つめてたってみんな言うてるで。・・・。ほら、美幸ちゃん。男がおるのに・・・」
美幸は、亜紀の横で椅子に座り、制服のミニスカートを右横にいる亜紀にわかるよう自分の右足部分を捲り上げて、穿いている黒タイツが破れていないかどうかを気にしていて、太ももを見せていた。
美幸「キャー♥賢太さんったらいやーん♥私の太ももを見ちゃあダメェ♥」
美幸は、右足部分をスカートで隠すしぐさをして、あたかも賢太を誘惑しているような物言いで、嫌がっていないけど嫌がるようなセリフを言った。
賢太「そ、そんな嫌がり方、自分から見せといて可愛い子ぶりっ子・・・いや、甘えん坊をしてええんかなあ?僕チンチンがぐんぐんと膨らんできたぞ―。」
亜紀「私、そろそろ戻りますね。美幸ちゃん、あとはごゆっくりね。」
亜紀が出て行って、休憩室は賢太と美幸が二人っきりになった。興奮していた賢太が、美幸に体を近づけて、畳の上で美幸の太ももを触り始めた。
美幸「キャー♥エッチィ♥やめてぇ♥イヤー♥私の太ももを撫で回さないでぇ♥」
賢太「美幸ちゃん、濃紺ブルマー穿いてるの?」
と賢太は息を切らして聞きながら、美幸の濃紺ブルマーが見えるように黒タイツの一部を破り、濃紺ブルマーのクリトリス部分に興奮しながら手を触れた。
美幸「痴漢除けに穿いてるけど、やだー♥エッチィ♥大切なところに手を触れないでぇ♥賢太さんのエッチィ♥」
賢太「ほんまは嫌がってないんやろ?」
美幸「本当にイヤー♥本当にやめてぇ♥」
賢太「じゃあ、泣いてるの?」
美幸「泣いてるよ。」
などと美幸は言っているが、全然泣いてなどいなくて喜んでいた。
賢太「あと他に首筋舐め舐めやおっぱいも揉んでみたいけど、仕事中やから深入り出来へんのが残念やなあ。」
誰かが、二人が楽しんでいるところに入ってきた。2人は慌てて、行為をやめて、我に返った。「何かやっとったか?」と男子従業員のひとりに聞かれたが、「何もないです。」と賢太が答えた。
亜紀が勤務するレストランは、営業が終わった。亜紀たち3人の女子は、着替えが終わり、店を出ていくところだった。夜の9時前後で外はすっかり暗くなっていた。3人が駅に向かって歩いていると、
「中条さん。」
としおりに後ろから声をかける男性がいた。彼は、レストランの常連客で20代半ばくらいの年齢だ。名前は多々良博史(たたら・ひろし)という。サラリーマン風でネクタイを着けている。なぜ客がウエイトレスの名前を知っているのか。それは彼女の名札をチェックしているからだ。
多々良「先を急いでいるところだね。いきなり声をかけてしまってごめんね。邪魔なら退散するから、気にしないでね。」
しおり「いえ、いいですよ。多々良さん。お話聞きますよ。亜紀ちゃん美幸ちゃん、先に帰ってもええよ。」
多々良「中条さん、ありがとう。嬉しいなあ。」
亜紀「じゃあしおりさん、おつかれさまです。」
美幸「おつかれさまです。今日も一日ありがとうございました。」
亜紀「美幸ちゃん、それ以前にバイトしてたお店で言わされてたことでしょう。私らにはおつかれさまだけでええで。」
しおり「美幸ちゃん、今日の店長やチーフの五十嵐さんに対する言い方を聞いて、私も辞めたいわって言うてたもんね。前の店に戻りたくなったんやないの?じゃあ。多々良さん、行きましょう。」
しおりは、多々良の話を聞くために二人と別れた。亜紀と美幸は駅へと向かった。
美幸「五十嵐さんには私ら“あの”秘密を知られてるしな。」
亜紀「あー、あれね。でも今日は麻木さんとあの後で気を晴らしたんやろ。」
美幸「そうやねんけど、五十嵐さんどう思ってるんやろか?亜紀、電話番号を教えたんやろ?あのことをネタに脅されたりするかなあ?」
亜紀「大丈夫。五十嵐さんはそんな人じゃない。そんな人やったら電話番号を教えてないから。」
美幸「ならええけど。賢太さんは私のことを本気になるかどうかやな。でも私も亜紀と同じで五十嵐さんもええと思うねん。二股はあかんのわかってるねんけど、どうしよ?」
亜紀「分かった。私が何とかする。というても五十嵐さんから電話がかかってきてからの話しになるねんけど、五十嵐さんから電話がかかってくるまで待ってくれる?」
美幸「分かった。じゃあ、電話があったら頼むで。しおりさんも一緒に。あ、もう駅に着いたわ。」
一方しおりは多々良の話を聞いていた。近くにある公園のベンチに腰かけている。
しおり「多々良さん、先日は手作りのクッキーありがとうございました。とっても美味しかったですよ。」
多々良「あ、ありがとうございます。でもさっきは急に君の名前を呼んだりしてびっくりしたよね?もし、危険を感じたら真っ先に彼氏の元に帰ってもええからね。」
しおり「か、彼氏・・・ですか?」
多々良「って言うか旦那さんかな?」
しおり「私、結婚しているように見えるんですか?」
多々良「違うの?じゃあ彼氏?結婚してるくらい年を取ってるという意味ではないからね。」
しおり「わかってますよ。」
多々良「君が21歳ってことはこの間上司の人が“もう21になったんや。”とか言うてるのを聞いて知ってるから。」
“違うの?”と多々良は嬉しそうに笑った。偶然聞こえてきたレストランのスタッフ同士の会話が聞こえたのだ。
多々良「おうちで待ってる彼氏のところに帰るんならええよ。」
しおり「私には彼氏も旦那もおりませんよ。でもそれも誰かが話してたんですか?」
多々良「そうじゃなくて、実は・・・用件を言うね。でも軽蔑されるかもしらんことやから、もし軽蔑したなら僕の方から退散するから。」
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