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残酷な(女装)美少年のテーゼ(第一話)

投稿:2022-01-09 01:17:46

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西村ユリ◆JYdWeXk(埼玉県/30代)

川口俊也(34)は都内男子高で数学を教える実直で真面目な教師。

妻(31)と5才になる娘と暮らす。

そんな川口が恋をした。

ある休日の昼下がり。

書斎で書き物をしていると、玄関のチャイムが鳴った。しばらくすると、バタバタと娘が入ってきた。

「お父さん、お客さんだよ!きれいなお姉ちゃんだよ」

「お姉ちゃん?...」

行ってみると、妻と玄関で立ち話しているのは、今年卒業した教え子、夢にまで見た上原光(ひかる)であった。

「あ、、川口先生?お久しぶりです」

上原はちょっと恥ずかしそうに視線を向けてきた。ドキッとした。

幼い娘が“きれいなお姉ちゃん”と間違えるのも無理はない。

華奢だがしなやかな、豹を思わせるような身体付き。清潔そうな長髪に長い睫毛。その顔立ちは女の子と見紛うほどだ。カジュアルでジェンダーレスなファッションは、それを更に強調している。街を歩いていれば、美少女と勘違いし振り向く人も多いだろう。

「先生には色々お世話になったのに、卒業以来ご無沙汰しちゃって、、近くまで来たもんですから、今日はお礼を兼ねて...」

上原はそう言うと、娘に“ハイ!”と、洋菓子らしき?手土産を渡す。

「そうか、それはそれは...。とにかく上がりなさい」

高校時代はもっと陰のある少年だった。今、目の前にいる上原は、微笑を浮かべ、表情が明るくなっているような気がする。川口は少し安心した。

「お姉ちゃん、このスイーツ美味しそうだね!」

娘が嬉しそうに言う。

「みゆき!お姉ちゃんじゃないのよ、お兄さんだから。ごめんね、上原さん。娘はまだ小さいから...」

妻のその言葉に娘は目を丸くしている。ジィーっと、上原の顔を不思議そうに見つめている。

「上原さんって、イケメンね?ジャニーズに入っても見劣りしないんじゃない?女の子に持てるでしょ?」

ジャニーズ好きの妻が、美少年を前にはしゃいでいる。

ジャニーズに入っても見劣りしない?

冗談じゃない!

上原は所謂ジャニーズ系イケメン少年とは趣が違う。ポップで陽気なイマドキのアイドルとは別種の美少年。

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どこか陰があり神秘的で、不思議な魅力がある。魅力?違う、、狂わされてしまうのだ。魔性の美少年であり、魔性の美少女でもあり、性の境界線が曖昧でその妖しさに魅了される。

容姿は勿論、その表情も少年であり、少女でもあった。妖しく美しい...。

川口も“あの日”から、ずっと、上原光の妖しい魅力に惑わされてきた。

今、半年ぶりに見る上原は、以前より明るくなっている。それは逆に秘めている本質的な陰の部分を強調しているようにも感じられる。

話はなんていうことのない、高校時代の思い出話と、進学指導等でお世話になったことへのお礼だった。

教え子を前に、少し緊張し無口になっているせいか?妻が不思議そうに川口と上原を見較べ視線を向けてくる。

女のカンは鋭いからな...。

川口の緊張感は妻にも伝わったのかもしれない。上原の美少女を思わせる美しさは尋常ではなく、妻もそれを感じ取っている可能性もある。

でも、川口に後ろめたさがあるわけではない。教師生活も10年になり、卒業生が訪ねてくることも何度かあった。

それに、女性が訪ねてくるのならともかく、相手は女性ではなく少年なのだ。浮気の心配なんてあるわけない。

なのに、川口はなぜこんなにも妻の視線が恐いのか?

「今度、見せたい写真とかあるから、メール交換しましょう。」

妻が席を外している間に、メール交換をした。断る理由もない。

帰り際に上原が視線を送ってきた。

あの、川口を惑わせた憂いを帯びた眼差し。誘い込まれるような眼差し。

卒業から半年、上原の美少年性、それに美少女性は益々磨きがかかったように思う。

去年の春。

川口は三年C組の担任を受け持った。

そこに上原光はいた。

一年の頃からその存在は知っていた。ひときわ目立ち際立った容姿。

“すごい美少年だな...”と、生徒は勿論、教師の間でも話題になった。

彼は一年時より二年、三年になるにつれ、その美しさに磨きがかかってきたようでもある。

数学の時間だった。

いつものように教鞭を執っている時。生徒を見まわしていると、一瞬だけ上原光と目が合った。

上原は口元に微かな笑みを浮かべた(ように感じた)のだ。

ぞくり!...と、した。

憂いを帯びた眼差しで何かを訴えるような微笑だった。

あれから川口は狂ってしまった。

C組の教壇に立つと、常に上原の視線を意識してしまう。彼に視られていると思うと落ち着かない気分なのだ。

この気持ちを何と表現していいのか?恋とは違う?今まで経験したことのない感情なのかもしれない。

恋?まさか、、、封建的で厳格な家庭に育った川口は、自身もそんな保守的な性格になっていった。

何度か恋もした。7年前に妻と結婚すると、娘をもうけた。

そんな川口が生徒に、それも男子生徒に恋をするわけがない。

世の中はジェンダーレス時代であり、LGBTに対する理解は深まってきてはいるが、川口には興味がなかった。

教師という立場上、差別的なことは絶対口にしないが、ゲイに対しては嫌悪感すら感じている。

そんな川口が、美少年に恋をした?

その思いを否定しようにも拭い切れない。これは、恋ではない!と、ずっと思い込もうとしていた。

上原がこの春に卒業すると、もう会えないのかもしれない...という切ない思いを自覚する。自分は上原光という教え子に恋してしまったのではないか?

自分が分からない。

そして、今日突然彼が訪ねてきた。

上原光は益々美しく成長していた。

“残酷な天使のように少年よ神話になれ♪”

川口はアニメには興味がなく、新世紀エヴァンゲリオンのことは、あまり知らないのだが、この『残酷な天使のテーゼ』という主題歌は好きで口ずさむことがある。

これは、いずれ成長して、自分の元から旅立たなければならない。という、母親にとっては残酷な命題。

それでも、我が子の成長を願うという、母親の愛を歌っているそうだ。

川口は上原光が卒業して行った日、それを口ずさんでいた。自分を母、上原光を天使に置き換えていた。

上原光が訪ねてきてから一ヶ月後ぐらいだろうか?彼からメールがあった。

先日のお礼、簡素な文面。

“奥さんによろしく伝えて下さい。今度、二人っきりで逢って下さい”

で、締め括られていた。

画像が添付してあった。

そこには清楚で目を見張るほど美しい美少女が、ワンピースに身を包み、憂いを帯びた眼差しで、微少を浮かべている。魔性の美少女...。

ぞくぞくっ!ドキリとした。

川口はかろうじて残されている理性を失いそうになる。

思いは一年前に遡る。

三年C組を受け持って夏休みを過ぎ、初秋になる頃だろうか?

上原光の様子がおかしいのだ。元々無口で静かな陰のある少年であったが、そこに何か悩みのようなものが加わっている。

“上原はイジメを受けている”という噂が流れてきた。

イジメは難しい問題である。直に本人に聞くのも個人の事情に立ち入るようではばかられる。それでも、川口は上原の様子に注意を向けていた。気になって仕方ないのだ。

ここは男子高校なのだから、あのような少女を思わせるような少年は、ちょっかいを出されやすいのかもしれない。川口は心配だった。

そんなある日のこと。

あれを見てしまったのだ。

放課後の校内を見まわっていると、ある教室に人陰が見えた。

そっと扉を開けて様子を窺うと、そこにいるのは上原ともう一人。

B組の井上が背後から上原に抱きついているようだ。

上原は明らかに嫌がって、それから逃れようとしている。

「何をしているんだ!?」

井上は「何でもないです」と言うと、そそくさと教室から出ていった。

「どうしたんだ?」と、上原にも聞くと、「何でもないんです」と言って、哀しそうな、幾分顔を赤らめながら教室を飛び出していった。

井上は背後から上原の胸を触っていた。揉んでいたと言ってもいいかもしれない。嫉妬心が起こる。

あれはイジメ?セクハラ?上原は逃れようとしている感じだったが、同意の元であるかもしれない。

生徒同士の恋愛に対して口を出すつもりはない。例えそれが男子同士であっても、この時代だ、口出しすることは出来ない。恋愛は自由だからだ。

でも、教師という立場上、校内での淫らな行為は黙認できない。

教師の立場?

違うだろ!自分は上原にj恋しているから井上に嫉妬し赦せないのだろう。

あの時のことを思い出し、川口は我に返った。

上原から送信されてきた美少女の写真は、川口の心を揺さぶる。

あの時の井上のように抱きついてみたい。川口は頭を抱えた。

気が付くと、川口は返信のメールを送っていた。一線を越えてしまうのか?

メールもらいました。

今度二人で逢いましょう。

“残酷な天使のように少年よ神話になれ♪”

川口は『残酷な天使のテーゼ』を口ずさんでいた。

「」#ブルー「」#ブルー「」#ブルー「」#ブルー

「」#ブルー

この話の続き

上原光とのメールのやり取りから数日後のことである。今度はスマホに電話があった。「今、話せますか?」「ああ...大丈夫だよ」話せますか?って、上原は何に気を使っているのだろうか?妻のことか?男女の仲じゃあるまいし、、まるで、相手の妻に気を使う浮気娘みたいじゃないか。…

-終わり-
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